AA−5 RX 他 について。

 ’84年のフルモデルチェンジでレオーネシリーズは一新され、RXも新型になりました。
新型RXはターボ付きエンジンを与えられ、念願だったモアパワーを獲得しました。
しかし、この新レオーネシリーズにはRXにも劣らぬ凝ったエンジンを与えられたモデルが
セダンのFF初期型にのみカタログ上に存在しました。それはSEというグレード、
廉価版ではなく中堅グレードでしたが、当時他社のカタログ上にもあった“低燃費スペシャル”
とも言うべきグレードでした。
 ベルト駆動OHC化されたEA82エンジン、標準モデルは9.0の圧縮比から
100ps/5600rpm、15.0kg−m/3200rpmのパワー、トルクを発揮しますが
このSE専用に用意されたエンジンは、当時のレギュラーガソリン仕様エンジンでは最高に近い
10.0の高圧縮比から105ps/5600rpm、15.3kg−m/3600rpm
を発揮しました。勿論、何の付加デバイス無しにこの数値を出せるわけではなく、このSEエンジン
にはクランク角度センサー、点火時期電子制御、とカタログに謳われている圧電素子を応用し
ノッキングを検知すると自動的に点火時期を調整するものが付加されていました。このあたりの技術は
当時既に目新しい物ではなく、例えば’81年に登場したホンダシティのエンジンではレギュラーガソリンで
圧縮比10.0を達成していますし、ノッキングコントロールの技術は’80年頃に登場した日産のターボ車に
採用され、この日産ターボ車の圧縮比は、ターボ車としては高い8.3というものでした。
圧縮比をノンターボ車並みに高くできるということは、ターボが効かない低速域でもそれだけ
ストレス無く走れる事を意味します。
 話を“SE”グレードに戻しますと、このSEは専用エンジン(圧縮比が違うという事は
シリンダーヘッドまで専用設計という事です。バルブリフト量も他のターボ及びNA車と異なる値でした。
動弁系も専用だっとようです。)の他に、ギヤ比が恐ろしく高い専用ミッションも
与えられていました。その結果、カタログ上の10モード燃費は他の標準エンジンのグレード
14.0km/Lより2kmも上回る、16.0km/L、クラストップの低燃費となっていたのです。
 しかし、実際走ってみるとどうだったのでしょうか?この専用のエンジン、ミッションを与えられた
SEは当時の定価は他の標準モデル、1800GFなどとほぼ同じ価格でした。
どう考えてもコスト高だと思うのですが。メーカーとしてもカタログを飾るだけのモデルで
真剣に販売したのかは疑問です。 もし時が戻れるなら、このSE専用エンジンを低燃費スペシャル
ではなく、ちょっと元気に走れるスポーツセダン仕様で出せたなら、また歴史は違ったかもしれません。
このSEエンジンにRX用のミッションを与え、駆動方式はFFのままで(重量増を避ける為;
このSEの車重は950kgしかないのです。)タコメーター以外の余計な装備も付けず、ステアリング
ギヤ比もRXと同じ17.0のクイックステアを与えたら、ちょっと面白いスポーツセダンになったと
思うのですが。  このレオーネSEに乗られていた方、もし居られましたらご一報ください。

 話をAA−5 RXに戻します。このRX(とGT)に与えられたEA82ターボエンジンは
7.7の圧縮比から135ps/5600rpm、20.0kg−m/2800rpmを発揮します。
最大過給圧は旧型EA81ターボの350mmHgに対し400mmHgに設定されています。
技術的には特に目新しい物はなく、ハイドロリック(油圧式)ラッシュアジャスターは
’80年デビューのトヨタソアラで実用化されていますし、135psのパワーも日産や三菱と比べて
特に優位ではありませんでした。このエンジンは途中’86年のマイナーチェンジで出力表示が
グロスからネットに変更になった際、小変更を受けているようです。ネット表示で最高出力は
120psになりましたが、発生回転数も5600rpmから5200rpmと低回転型になっています。
最高出力よりも過渡特性、アクセルレスポンスを重視したのでしょう。このネット120psという
数値は、例えば少し後の時代のトヨタの4AG(AE92型)では1600のNAで(4バルブDOHCですが)
出せてしまう値です。
 これだけ書くと、ではレオーネのEA82はトロいエンジンなのか?と思われるかもしれません。
車はエンジンだけで走るのではなく、全体のバランスで走るものです。このAA系レオーネは
’86年の全日本ラリー選手権で綾部美津雄選手がシリーズチャンピオンに輝いている事から
伺い知れるでしょう。(因みにフルタイム4WDのRXUではなく、パートタイム4WDの
AG5での戦績です。)更に同時代の海外ラリーで活躍したレオーネは、サファリ仕様で推定170ps
これは排気系のチューンのみで達した出力だそうです、当時のサファリ仕様車の写真を見ても
現代のターボチューンには必須のインタークーラーさえ付いていません。インタークーラー装着で
出力は確かに向上しますが、給気経路が長くなり、間に熱交換機を挟む事はアクセルレスポンス、
極限域での扱い易さに影響します。またそれだけトラブルの発生率も高くなります。
あえてシンプルで信頼性の高いメカニズムのみ採用した堅実な姿勢が感じられるのです。
更に、7.7と低めの圧縮比は強化アクチュエータ(プローバで昔造っていたらしいです)等で
わりと簡単にブーストアップできる余力があるという事です。

b_con10.jpg (18353 バイト) 写真は強化アクチュエータ。外観は通常の物と変わりません。

事実、BC5レガシィやGC8が
ラリーで活躍した時期(’90年代初頭)、ダートラのCクラス(ナンバー無しの改造車クラス)
ではプライベートチューンのAA型レオーネの改造車をよく見ました。給排気系のチューンで
170〜190ps近くまでパワーアップされた車両が殆どだったようです。
因みにAA系レオーネRXのミッションは当時新開発の5速を与えられていますが、このミッションは
資料によれば「200psまで耐えられる」物だったようでプライベーターのダートラC車両でも
駆動系のキャパシティは充分だったのです。ダートトライアルの発案、提唱者でもある高岡祥郎氏の親心?
だったのでしょうか。

今回、私のAA−5 RX については、市販の汎用ブーストコントローラーを用いて
過給圧をコントロールすることにしました。詳細は別途報告することにします。

ブーストコントローラー装着




 

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