AB−5RXのエンジンについての考察

 RXのエンジンは,形式名はEA81型で,他のレオーネと共通である。
基本的には,総アルミ合金製水平対向4気筒OHV1781
cc,ピストンまで
アルミ合金,プッシュロッドもアルミである。内径×行程=92
mm×67mm
のショートストローク型である。クランクシャフトは3個のベアリングで支持
される。直列エンジンの場合,3点支持ではいかにも旧式の,高回転は苦手な
エンジンのように思えるが,クランクシャフト長が短い水平対向の場合,3点
支持でも充分剛性が保て,よけいなフリクション ロスを抑えられる(はずである。)
クランクシャフトの真下に,これも長さが短いカムシャフトが配置され,その
カムシャフトは,左右に出たプッシュロッドを押す。このEA81型はショート
ストロークであり,ゆえにプッシュロッド長も短い。これだけを考えると,この
エンジンは高回転型であると言えよう。事実,私のRXは,1速及び2速では
8000回転フルスケールのタコメーターを振り切る。また,重いカムシャフト
がクランクの真下つまり車体の中央に位置する為,重量バランスも良い。OHC
のEA82型は カムシャフトがエンジンの左右両端に位置する為,この点では
不利であろう。
 シリンダーヘッド,燃焼室については,RXのエンジンは他のレオーネよりも
圧縮比が高くなっているが,ピストンは他のレオーネと共通の,頭が平らなもの
である。このことからも,RXのエンジンはシリンダーヘッドまで専用設計である
と考えられる。バルブスプリングも2重巻きであった。ただ,燃焼室については,
一般的に理想の形状と言われる半球形ではなく,楕円形というか,饅頭型の独特
の形状であり,ビッグボアな事もあり,表面積は大きく,燃焼効率はあまり良さ
そうではない。その楕円の中に,わりと小さめの給気及び排気バルブがささって
いる様は,なんだか たれぱんだ を連想させる。この細めの給排気ポートにより,
低速トルクが薄くなりがちなショートストロークの弱点をある程度補っているよ
うである。特に,RXの市販型エンジン,及び他の一般的なレオーネも含めて,
キャブレターからシリンダーヘッドまでの距離が,普通の直列エンジンと比べる
と異様に長く思えるのだが。ちなみに,サファリ仕様,あるいはレース仕様のR
Xでは,左右のシリンダーヘッドのすぐ上にダウンドラフトタイプの大口径
ウエーバーがしがみついている。おそらく大口径ポート,ビッグバルブを持つ
スペシャルヘッドであろう。
 この水平対向エンジンは,ヘッドを面研する際に注意を必要とする。というのは,
ヘッドを面研すると,シリンダーヘッドの高さ方向の寸法が変わる。すると,給気
及び排気マニフォールドのY字の寸法と合わなくなる。ゆえに,給排気マニフォー
ルド及びポートもそれに合わせて加工が必要となる。直列エンジンでは何でもない
ことが,水平対向ではやや面倒な作業を伴う。(ゆえに私はエンジンO.H.の際
面研を断念した。0.5mm位なら大丈夫のような気もするが,面研したレオーネオーナ
ーの方,連絡ください。)
 最後にもう一つ注文をつけるとすれば,キャブレターは2個ついているのだが,
エアクリーナーケースの容量が他のワンキャブ車と同じではないか。これでは2個
のキャブレターに充分空気を供給できないと思うのだが。排気系についても,妙に
排圧が高い気がする。レオーネのスポーツマフラーなんて,...無いだろうな。

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