エピローグ レオーネを降りて 後編

 

 
前編からの続き)

こうして、私が19年愛したAB5RXはT氏の手下のI氏の許へ。
入れ替わりにSVXが宮城から我が家にやって来た。それが2011年1月の事だった。

フルノーマルの ヴァージョンE。 初年度登録1991年。ごく初期型のものだった。

 あと2ヶ月引き取るのが遅かったなら、この車も波の藻屑と消え去っていたかもしれない。
ホイールをSVX純正のBBS16インチに交換、ステアリングをナルディに、オーディオをCD
プレイヤー付きの物に交換して約1年、この車を愉しんだ。 ステアリング・ボス(ハブ)は今
でもこの車用の社外品ハンドル対応の物がネットで手に入る。 オーディオの換装はちょっと
難しかった。この車用の配線キットなど売っていないので、自分で配線を調べて結線するしか
ない。が、よく見て慎重にやれば出来なくもない。 とても快適な車だった。
 全体のドライヴ・フィーリングはBC5レガシィRSに近いものがあった。ハンドルの軽さ、
ユルさ加減など。1.5トンの車重に240ps、31.5kg-mのパワーとトルク。結構機敏に走る。
加速性能、高速巡航性ともに文句ない。等長エキマニなのでエンジン音はとても静か。
アクセルを踏み込んだ時にかすかに聞こえてくる6気筒サウンドもスバル車とは思えないくらい
良かった。ボディ剛性も充分。オールストラット、専用開発のサスペンションも、乗り心地良く
もともと車高が低いのでロール感もなくコーナーリングも快適。ブレーキも、車重の事を考えて
早めのブレーキングを心掛ければ充分な性能だった。燃費も3.3リッターの排気量、1.5トン
の車重、オートマである事を考慮すれば良い方だろう。街乗りで6〜7km/L、高速では10km
/Lを超えた事もあった。 この車と同級生、バブル期に生まれた同じような成り立ちの車、
例えばZ32フェアレディ、三菱GTO、スープラ、ユーノスコスモ等と比べても実用燃費やその他
の性能面で劣るところは何もない。
 この車の名誉の為に敢えて強調しておくが、よく言われるオートマティックトランスミッション
について。国内仕様のSVXに限って言えば、レオーネのオートマを流用した、強度不足だ
などと言うのは全くの言いがかり、嘘である。この車の為に専用開発され、今もその基本構造
は共通のVTD-4WDシステム。前:後=35:65の不等トルク配分システムはFR車的な素直で
楽しいハンドリングをもたらす。今となっては少々古い4速だが、大排気量NAエンジンで低速
から充分なトルクがある事、4速オーバードライヴのギヤ比がそれを補う。田舎道を静かに
巡航してる時などは、いい車に乗ってるな、と心底思う。余談であるが、何故SVXはAT専用
でMTの設定が無かったのか、それはこのVTD-4WDシステムの開発に予算と工数を掛け過ぎ
て、MTの開発まで手が廻らなかったというのが本音であろう。私が乗ったこの車は新車からの
ワンオーナー車をT氏を介して譲り受けたのだが、記録簿を見てもATのオーバーホールの
記載は無かった。 このSVXのATに故障が頻発したと言われる理由については、富士重工
としてもこの車以前には、ここまで大排気量大パワーの車のトランスミッションを手がけた事が
無かった故の経験不足に起因するものであろう。トヨタや日産はトランスミッションの開発は
アイシンやジャトコ等の下請け専門メーカーと共同開発しているのである。それぐらい難しい
仕事を富士重工は全て自社開発している事を考えると、充分頑張っていると思うのだが。
 尚、レオーネのミッションを流用云々などと言われるデマの根拠だが、米国輸出仕様の
SVXには廉価版として、VTD-4WDではなく、ACT-4の4WDシステムを用いたものや、なんと
FF仕様まであった。この華やかな姿のボディが手に入れば、特にアメリカは広く平坦で真っ直ぐ
な道が延々と続くので駆動方式は関係ない、という顧客も居たのだろう。
 私の乗ったこの車について言えば、不具合は時々集中ドアロックが不調になる事と、パワステ
のオイルクーラーあたりからのオイル漏れであった。これはオイルクーラーの配管部品が経年
で腐食していたからで、もう手放すという時に部品を新品に交換して直した。あとよく言われる
不具合として、オートエアコンの温度調節ができなくなる、パワーウインドウの故障など。
部品を交換すれば直るのだが、肝心の部品供給がそろそろ心配な年代になってきた。
解体屋と仲良くする、オーナーズクラブ(があれば、だが)の繋がりを活用するなどの対応が
必要になるだろう。また、このSVXは完全に専用設計の為、他のスバル車と共通の部品が
殆ど無い。レガシィやインプレッサであれば、歴代のモデル間で共通部品を融通して安価に
補修、改造もできるが、SVXはホイール一つをとっても、他のスバル車と互換性が無い。
何かあった時、ちょっと不便だ。 もう一つネガティヴな要素を挙げるとすれば、それは維持費
(税金)のバカ高さ。3.3リッターの排気量の自動車税、車重1.5トンオーバーの重量税、更に
車齢18歳オーバーの重加算税など。 トヨタの言いなりな税制など止めちまえと言いたい。
 この車の美点の一つに、ジウジアーロ氏の手によるその流麗なスタイリングが挙げられる。
高速を走っている時など、後ろからピタリと他の車がくっついて来る。煽っているわけではなく
ストーカー?のようにヒタヒタと。左車線へ避けてやっても、そいつもまた避けてずっと付いて
来られたり。スーパーカー世代の人間であればこの車にただならぬ物を感じるはずである。
今でも稀にこの車とすれ違うと、思わず目で追ってしまうのである。 

いい車だった。またいつか乗りたいな。

 

SVXを1年乗った後、2012年1月の終わり、次の車を探していたところ、8209でBD5型
レガシィRS 後期型MTの白(色コード51E)が出ていたので、ちょっと高かったけれど購入。
SVXがATだった為、MTに乗りたかったのと(と言ってもインプレッサもあったが)バカ高い
SVXの税金を払うのが嫌だった為。 ちょうどSVXと入れ替わりにBD5はやって来た。

冬の雨の朝。新入りのBD5、今日限りのSVXと記念撮影。

 確か1997年6月初年度登録 走行距離14万5千km。今思えば、ちょっと高かった。
一年乗って手放した値段は購入価格の半額だったから。 この車も社外16インチホイール
オーディオをCDチェンジャー付きMDデッキにしたりと少しだけ手を入れて乗った。
後になってブレーキパッドをプロジェクトμ、ブレーキホースもインプレッサ純正低膨張タイプ
の物に交換してブレーキフィールを向上させた。フロント、リヤのタワーバー、リヤの
サブフレーム?など前オーナーの手によるドレスアップもあった。ただ、後付けHIDの
ヘッドライトは暗くて困った。ハイビームも付いていた社外品バルブでは暗くて車検に通らず
純正バルブに交換して光軸を何度も調整してやっと通した。
 この車も同時代のGC8と同様、欧州側面衝突対応の為サイドシル、センターピラーが強化
されたボディは、長いホイールベース(GC8比+100mm)のわりに剛性感も高く、そのホイール
ベースの長さ故の安定感もあった。ハンドリングはSVXよりはシュアで精確だったが、GC8ほど
軽快ではない。この車はスポーツカーでなくあくまでセダンである、と主張しているようである。
改良された5速MTのシフトフィールも良好。フジツボのマフラーからの音も心地よかった。
(但しマフラーはその後穴が開いたので8209で同じ型でオールステンレスのフジツボをゲット
して交換した。) この車でスバル車初の採用となったビルシュタイン製倒立ストラットサスペン
ション、剛性は確かにあるのだが、ショックの吸収性能は今ひとつだった。ショックアブソーバ
は固ければいいというのではない。衝撃を吸収、減衰してこそ本来の役目を果たすのである。
このビルシュタインは高速で路面の継ぎ目などを越える時、一度で衝撃を吸収しきれず、
揺り返しが来るのがどうも不満だった。某KYB製のショックに交換してやろうと思って中古品を
手に入れたのだが、交換する前に車両を手放してしまった。
 エンジンは低速トルクも充分にあり、スバル車初の280ps車だけあって確かに速い。
この車について、低速トルクが無くて乗り難いという声を聞くことがあるが、そうではない。
5速ミッションの特に4速、5速のギヤ比がちょっと市街地走行には向かない設定になって
いるのだ。市街地で5速に入れてはいけない。エンジンは千回転ちょっとでノッキングしながら
走ることになる。ターボとは言え2リッター4気筒のエンジンで、この回転数で1370kg(空車)
ものボディを走らせろという方が無理なのだ。 このハイギヤードなミッションは高速巡航時に
その威力を発揮することになる。高速燃費はGC8よりも良かった。同じ2リッターターボ、
280psエンジン、こちらはGC8よりも100kg以上重い車重にもかかわらず、クロスミッション
でトップエンドのギヤ比が低いGC8より+1km/Lはよく走った。
 長いホイールベース故、後席の居住空間は余裕があり、トランクスルーもあり荷物も結構
積めた。オプションのエクセーヌインテリアだった事もあり、なかなか高級感もあった。
ドアの閉まる音も、GC8の安っぽい音とは全然違う車格を感じさせるものだった。

 2013年。3月で仕事を辞めて四国の実家へ戻る事になった。BD5の実用性には何の不満
も無かったが、実家に車は2台は置けない。BD5は手放す事にした。

 その少し後、もう一つ別の問題が持ち上がる。4月から隣の県の大学へ通うのだが、そこの
大学の寮に空きが無く入居できないらしい。実家から片道70kmの距離を毎日通う事になる 
ようだ。 GC8で通うとしたら、ガソリン代は月幾らになるだろう。 燃費の良い足グルマが必要
になった。実家の置き場所も軽1台ぐらいならなんとか余分に置けそうだ。 
 実家に帰った後では、すぐに大学に通う事になり、足グルマはすぐに必要だし、つての無い
四国で車を探して準備するのは不可能だ。急遽、岐阜に居るうちに足グルマの軽を調達する
事になった。

 短期間にいろいろゴタゴタ紆余曲折あったものの、なんとか足グルマの軽をゲット。

中濃スバル様、チャッピィ様にお世話になり、このKK4ヴィヴィオは通学に耐える様、クラッチ、タイベル
を新品に、各部を調整してもらった。リヤショックのスタビブラケットが折れてスタビが外れていたので
ショックは従業員販売で安く入手したKYBのNewSRスペシャルを入れた。上の写真は引っ越す直前
の岐阜の自宅にて。

 現在は四国の実家にて、ヴィヴィオは通学の足として4月〜7月の間に1万kmも走ってしまった。
6月頃に点火不良?ノッキングするようになったのでプラグ(イリジウムしか売ってなかったので)と
プラグコード(ネットでウルトラをゲット)を新品に交換した。 その後7月から大学の寮の部屋に空き
ができたので入れる事になり、ヴィヴィオの過酷な使用状況も改善されつつある。
 このヴィヴィオ号、なかなか頑張ってます。燃費は片道70kmの通学に使用して16〜17km/L
を記録。夏場にエアコンを使用しても15km/Lを割る事はない。 現在はマフラーをフジツボに交換
インタークーラーもE型(最終型)用の効率の良い物に交換、フロントのドライブシャフトブーツ切れも
交換して直す予定。

 

レオーネRXからインプレッサWRXとヴィヴィオRX-R。RX繋がりの正常進化だと思うのですが
如何かな。

 

 

 

 

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